202313日 聖霊降臨後第11主日

          マタイ福音書14章22~33節 「 祈り 追いかけ 捕らえる 」 

14:22 それからすぐ、イエスは弟子たちを強いて舟に乗せ、向こう岸へ先に行かせ、その間に群衆を解散させられた。23 群衆を解散させてから、祈るためにひとり山にお登りになった。夕方になっても、ただひとりそこにおられた。24 ところが、舟は既に陸から何スタディオンか離れており、逆風のために波に悩まされていた。25 夜が明けるころ、イエスは湖の上を歩いて弟子たちのところに行かれた。26 弟子たちは、イエスが湖上を歩いておられるのを見て、「幽霊だ」と言っておびえ、恐怖のあまり叫び声をあげた。27 イエスはすぐ彼らに話しかけられた。「安心しなさい。わたしだ。恐れることはない。」28 すると、ペトロが答えた。「主よ、あなたでしたら、わたしに命令して、水の上を歩いてそちらに行かせてください。」29 イエスが「来なさい」と言われたので、ペトロは舟から降りて水の上を歩き、イエスの方へ進んだ。30 しかし、強い風に気がついて怖くなり、沈みかけたので、「主よ、助けてください」と叫んだ。31 イエスはすぐに手を伸ばして捕まえ、「信仰の薄い者よ、なぜ疑ったのか」と言われた。32 そして、二人が舟に乗り込むと、風は静まった。33 舟の中にいた人たちは、「本当に、あなたは神の子です」と言ってイエスを拝んだ。

 

 マタイ14章は、洗礼者ヨハネが殺された場面から始まります。それを聞いてイエスさまは、弟子たちを連れて人里離れたところに行かれます。しかし、大勢の群衆が追いかけてきて、イエスさまはその群衆の姿を見て、深く憐れまれたと言います。病気の人を癒し、神の国についての話もしたのかもしれません。日が暮れるまで共におり、食べ物がないから解散させようという弟子に対し、あなたがたが彼らに食べ物をあげなさい、と言われ、弟子たちが持ち合わせていた五つのパンと、二匹の魚で、イエスさまがちぎったパンを弟子たちに配らせ、五千人の給食という奇跡が行われます。
 今日の箇所は、その直後、弟子たちだけを船に乗せ向こう岸にわたらせるところから始まります。イエスさまは群衆を解散させ、祈るために山に登られたと言います。弟子たちの何人かは、この湖で漁師をしていた人たちです。船で向こう岸まで行くことは、たやすいことだったでしょう。しかし、おり悪く逆風が起こり、前へ進めなくなります。そこへ湖の上を歩いて、イエスさまが助けに来ます。弟子たちは、その姿を見て幽霊だと思ったと言います。湖の真ん中にいるのですから、人が助けに来るとは、想像もつかなかったと思います。幽霊が来たと思い、恐れる弟子たちに、イエスさまは、「安心しなさい、私だ、畏れることはない」そう語りかけます。するとペトロは、もしあなたでしたら、私に命令して、水の上を歩いて、そちらに行かせてください。」そう願います。イエスさまが「来なさい」というと、水の上を歩いて、イエスさまの方に向かいますが、強い風が吹いて、恐れに駆られ、沈みかけたと言います。イエスさまはペトロに向かって、「信仰の薄い者よ、なぜ疑ったのか。」そういう厳しい言葉をかけられますが、イエスさまはペトロをすぐに手を伸ばして捕らえてくれた、と書かれています。
 五千人の給食の出来事は、乏しい力で教会を始めていった弟子たちにとって忘れ難い、何度も思い出す出来事であったと思います。しかし、この湖上での出来事も、何度も思い出し、励まされた、忘れ難い出来事だったと思います。
 教会のために、漕いでも、漕いでも、ちっとも前に進まない。湖の真ん中で、孤立無援で立ち往生している、そんな風に思える状況が何度もあったと思います。でも、使徒たちは、この湖上での出来事を思い出し、イエスさまが今も祈り続けてくれていること、必要とあれば、思いもかけないところでも、必ず助けに来てくれること、そのことを信じながら奉仕することが度々あったと思います。実際に思いもかけない助けが与えられ、本当に神さまは助けてくれるんだと強い思いを持ちながら、強い風が吹けば、また不安と疑いに心が支配される、そんなことを繰り返しながらも、「信仰の薄い者よ。なぜ疑うのか。」その声を思い起こすこともあったと思います。そして、私たちも同じです。漕いでも、漕いでも、全然前に進まない。しょっちゅうそう思っています。でも、思いもかけない助けが与えられ、これでもう自分の信仰は揺るがないだろう、そんな風に思ったのも束の間、強い風が吹けば、また不安と疑いに支配される。でも、そんな時も、「信仰の薄い者よ。」と言いながらイエスさまは、しっかりと手を伸ばして、再び捕らえてくれる。
 イエスさまは、私たちのために祈ってくれる方です。イエスさまは、窮地の時に、私たちが助けを求める前に、追いかけて助けに来てくれる方です。私たちが疑いの中にある時に、「信仰の薄い者よ」と言いながらも、沈みかける私たちを捕えてくれる方です。すぐ揺らぐ自分の信仰は信頼できないかもしれません。それでもイエスさまは、信頼できます。今日の説教題は、「祈り、追いかけ、捕らえる」としました。恐らく教会の前を通りすぎる人の中には、説教題を見て、これは信仰者がすることだと思った人もいるかもしれません。しかし、聖書が伝えてくれることは、祈り、追いかけ、捕らえてくれるのは、イエスさまの方だということです。イエスさまを信じて、漕ぎ続けましょう。

               


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