2023年１２月１７日　待降節第３主日

1:6 神から遣わされた一人の人がいた。その名はヨハネである。7 彼は証しをするために来た。光について証しをするため、また、すべての人が彼によって信じるようになるためである。8 彼は光ではなく、光について証しをするために来た。

さて、ヨハネの証しはこうである。エルサレムのユダヤ人たちが、祭司やレビ人たちをヨハネのもとへ遣わして、「あなたは、どなたですか」と質問させたとき、彼は公言して隠さず、「わたしはメシアではない」と言い表した。彼らがまた、「では何ですか。あなたはエリヤですか」と尋ねると、ヨハネは、「違う」と言った。更に、「あなたは、あの預言者なのですか」と尋ねると、「そうではない」と答えた。そこで、彼らは言った。「それではいったい、だれなのです。わたしたちを遣わした人々に返事をしなければなりません。あなたは自分を何だと言うのですか。」ヨハネは、預言者イザヤの言葉を用いて言った。

「わたしは荒れ野で叫ぶ声である。『主の道をまっすぐにせよ』と。」

遣わされた人たちはファリサイ派に属していた。彼らがヨハネに尋ねて、「あなたはメシアでも、エリヤでも、またあの預言者でもないのに、なぜ、洗礼を授けるのですか」と言うと、ヨハネは答えた。「わたしは水で洗礼を授けるが、あなたがたの中には、あなたがたの知らない方がおられる。その人はわたしの後から来られる方で、わたしはその履物のひもを解く資格もない。」これは、ヨハネが洗礼を授けていたヨルダン川の向こう側、ベタニアでの出来事であった。

　いつの時代でも、学生から社会人になる、というのは大変なことです。カトリックの信仰を持っている若松英輔さんという人が、その大変さは、自分が自分になっていく苦しみだと本に書いてありました。今までは、敷かれたレールをうまく渡り切ればよかった。しかし、社会人になると、自分で道を選び、自分の力で歩んでいかなければならない。会社組織であっても、違った形態のものでも、その責任の一端を担わなければならなくなる。それは苦しいことです。責任が増していけば、必ず自分の力不足を嘆くようになるでしょう。ああ、私にもっと力があれば、そう心でつぶやくことがしばしばあります。普通に生きていくこと、自分で自分を背負っていくこと、それだけでもとてもしんどいことです。
　今日の福音書の箇所は、先週に続いて、洗礼者ヨハネ、イエス・キリストと出会うための道備えをする者の話であります。今週はヨハネによる福音書からです。ここでエルサレムのユダヤ人と書かれていますが、おそらくはサンヘドリン、最高法院から遣わされてきた人だと思われます。遣わされた人は、洗礼者ヨハネに尋ねます。「あなたはメシアなのか、主の日が来る前に遣わされるという預言者エリヤなのか、それとも再びモーセのような預言者が与えられるといわれているあの預言者なのか」と。
　洗礼者ヨハネは、それらのすべてを否定します。ヨハネは、私は荒れ野で叫ぶ声、主の道をまっすぐにするもの、と答えています。ヨハネはもしかしたら、自分の力不足を感じ取っていた人かもしれません。ラクダの毛衣を着ていたというヨハネの姿は、エリヤの格好と同じです。もしかしたらどこかで意識していたのかもしれません。しかし、人々に悔い改めの洗礼を授けながら、本当に人を救っていくことのできない、自分の力不足を感じていたかもしれません。ヨハネは思う、私は、メシアでもエリヤでもない。
　しかし、そのヨハネに神さまから福音が告げられる。喜びの知らせを知ります。その知らせとは、あなたの後に、あなたよりもはるかに優れた方が来られる、ということです。本当の救い主が来られる、ということです。ヨハネは重圧から解放されたと思います。
　ルターは恵みの信仰を知った時、どんな思いだったのだろうと思うことがあります。ルターは熱心な修道士であったといいます。週に二日は断食し、週に二日は徹夜の祈りをしたといいます。あのままやっていれば、死んでいただろう、と自分で語っています。しかし、聖書学者でもあったルターは聖書を繰り返し読む中で、救いは自分の働きではなく、神の恵みによって救われることを発見していきます。恵みの信仰を発見していく。ルターは思ったと思います。ああ、もう自分で自分を救わなくてもよいのだと。呪縛が解けたような思いを味わったと思います。
　洗礼者ヨハネは、最初の信仰者といってよいと思います。自分が背負ってきたものをゆだねることができるイエスさまを初めて知っていた存在です。おそらくヨハネは、大きな喜びを込めて、語ったと思います。

「わたしは水で洗礼を授けるが、あなたがたの中には、あなたがたの知らない方がおられる。その人はわたしの後から来られる方で、わたしはその履物のひもを解く資格もない。」

　私たちは、イエスさまと出会って、自分で自分を救わなくてもよいものにされました。自分で自分を背負わなくてもよいものにされました。すべてを委ねられる方に出会いました。自分は決して光ではありませんが、光を指し示すことができるものです。自分から出る光ではなく、あの方に照らされる光によって、私たちも光の子とさせられます。子の救い主は、私たちの解放者です。もうすぐクリスマスです。この救い主の誕生を祝う準備を進めましょう。