202526日 顕現後第3主日

                 ルカ福音書4章14~21節 「 愛はしぶとい 」 

4:14 イエスは"霊"の力に満ちてガリラヤに帰られた。その評判が周りの地方一帯に広まった。15 イエスは諸会堂で教え、皆から尊敬を受けられた。

16 イエスはお育ちになったナザレに来て、いつものとおり安息日に会堂に入り、聖書を朗読しようとしてお立ちになった。 17 預言者イザヤの巻物が渡され、お開きになると、次のように書いてある個所が目に留まった。 18 「主の霊がわたしの上におられる。貧しい人に福音を告げ知らせるために、/主がわたしに油を注がれたからである。主がわたしを遣わされたのは、/捕らわれている人に解放を、/目の見えない人に視力の回復を告げ、/圧迫されている人を自由にし、 19 主の恵みの年を告げるためである。」 20 イエスは巻物を巻き、係の者に返して席に座られた。会堂にいるすべての人の目がイエスに注がれていた。 21 そこでイエスは、「この聖書の言葉は、今日、あなたがたが耳にしたとき、実現した」と話し始められた。

  信徒説教者養成講座で、以前やっていた時にはない科目で、教会史、教会の歴史の講義が増え、私はその担当者になったので、教会の歴史について、学びなおしています。その中で、西暦100年を過ぎたころ、イエスさまの弟子たちやパウロなどがすべて死んでしまった後、信仰がどのように広まっていったか、特にローマなどで信仰がどのように広まったのか書かれているものがありました。一つは、永遠の命という宝を求める人が増え続けた。そしてもう一つは、キリスト者の愛の働きでした。引用しますと、

 すなわち愛の活動が彼らの信仰の真実性を証明した。やもめと孤児の救援、病人と弱者と貧者等に対する援助、囚人への配慮、貧者の埋葬に対する配慮、奴隷と失業者に対する配慮、旅行者への配慮、貧しい教会や危機のもとにある教会への配慮
 当時の愛に飢え渇く人々に、実に兄弟相互扶助は大きな印象を与えた。この事実をキリスト教に反対する異教の論争家さえ、是認しないわけにはいかなかった。

  そう書かれています。信仰はやがてヨーロッパ全体に広がり、小さなものを守る働きは、福祉事業として国家事業にもなり、人権思想にもなりました。明治以降日本にも流入していきます。日本の幼稚園や女性教育は、教会から始められていきました。それ以降教会以外の幼稚園もたくさんできていきました。小さなものが大切にされる世の中が教会を越えて広がっていくことは、良いことだと思います。しかし同時に、魂が抜かれたものように感じることもあります。小さなものを大切にする営み、福祉のような働きは、漏らすことなく平等に与えられるよう、法律となり制度となり、システムになっていきます。最初にこのような制度を整えていった人たちには、おそらく小さなものを守ろうという強い思い、情熱があったでしょう。しかし、それは時を経るごとに、いつしか事務的になり、形だけが残され、小さなものを守ろうという祈りといいますか、スピリットが小さくなってしまう。アメリカなどを見ると、正直、今は、風前の灯火で、消えてなくなりそうな時代に来ているように思われます。格差社会であり、能力主義であり、自己責任といわれる時代です。貧しいのも、不遇なのも、自分のせいだから仕方ないと言われる時代に見えます。
 ただ、聖書が教える不思議な教えの一つは、愛はとてもしぶといものだということです。イエスさまが語りだした、小さなものを大切にする愛は、一直線に弟子たちに伝わり、多くの異邦人に伝わり、世界に伝わったわけではありません。先ほど引用した西暦100年頃の時代は、ローマでキリスト教が迫害されていた時代です。迫害していたものでさえ、キリスト者の愛の働きは是認しないわけにはいかなかったと書かれています。今日の福音書の箇所でも、最終的には、この故郷の人たちにイエスさまは殺されそうになっています。そして、実際にイエスさまは、最終的に十字架で殺されます。それでも、イエスさまの愛は残り続けた。否定されても、否定されても、消えかけても、愛は復活しました。
 今日の第二日課はⅠコリントの12章の終わりでしたが、来週読む続きの13章は「愛の賛歌」と呼ばれる個所です。愛の賛歌の締めくくりは、

 それゆえ、信仰と希望と愛、この三つはいつまでも残る。その中で最も大いなるものは、愛である。

  そう締めくくられています。愛はいつまでも残るもので、最も大いなるものです。わたしたちもこの世界に小さなものを大切に思う愛がなくならなくするための小さな奉仕として、イエスさまの声を聞きましょう。イエスさまの言葉を聞きましょう。雨や雪が天から降れば、空しく天に戻ることはなく、地を潤し、芽を出させるように、神さまの言葉も空しく天に戻ることなく、私たちの心を動かしながら、神さまが望むことを成し遂げ、与えられた使命が成し遂げられます。
 小さなものの一人として、イエスさまの愛を受けましょう。その愛を受けて、私達も愛を込めた小さな働きをなしていきましょう。


トップ