202622日 四旬節第1主日

                 マタイ福音書4章1~11節 「 魂の回復 」 吉田達臣

さて、イエスは悪魔から誘惑を受けるため、“霊”に導かれて荒れ野に行かれた。そして四十日間、昼も夜も断食した後、空腹を覚えられた。 すると、誘惑する者が来て、イエスに言った。「神の子なら、これらの石がパンになるように命じたらどうだ。」
  イエスはお答えになった。
「『人はパンだけで生きるものではない。神の口から出る一つ一つの言葉で生きる』
と書いてある。」
次に、悪魔はイエスを聖なる都に連れて行き、神殿の屋根の端に立たせて、言った。「神の子なら、飛び降りたらどうだ。
『神があなたのために天使たちに命じると、

あなたの足が石に打ち当たることのないように、
天使たちは手であなたを支える』
と書いてある。」イエスは、「『あなたの神である主を試してはならない』とも書いてある」と言われた。
  更に、悪魔はイエスを非常に高い山に連れて行き、世のすべての国々とその繁栄ぶりを見せて、
「もし、ひれ伏してわたしを拝むなら、これをみんな与えよう」
と言った。
すると、イエスは言われた。「退け、サタン。
『あなたの神である主を拝み、
ただ主に仕えよ』
と書いてある。」そこで、悪魔は離れ去った。すると、天使たちが来てイエスに仕えた。

  聖書の大事な教えとして、「自分を愛するように、隣人を愛しなさい」という言葉があります。聖書を読まなくても、人を大事にしなさいとか、周りの人に感謝しなさいとか、似たようなことをずっと言われてきた気がします。いささか、聖書を読んで考えさせられたのは、「自分を愛する」という部分です。自分を愛するというのは、自分が大好きとか、ナルシスティックな気分とか、自分第一とか、そういうものとは違う響きがあります。特に聖書に書かれているからこそ、愛するって何か、そのことを深く考えさせられます。
  今日の福音書の箇所は、悪魔の誘惑、と言われる個所です。イエスさまは、この手前で、洗礼を受けています。「これは私の愛する子、私の心に適うもの」という天からの声を聴いた続きとして書かれています。イエスさまは霊に導かれて、荒れ野で4040夜断食したといいます。イエスさまは、空腹を覚えたといいます。悪魔はイエスさまに言います。お腹がすいているなら、神の子だろ、石をパンに変えて食べたらどうだと。イエスさまは、人はパンだけで生きるのではなく、神の言葉で生きる、そう言って断ります。この対話は、私たちには関係のない話に見えます。私たちは、神の子ではないし、石をパンに変えることができないからです。しかし、私たちは時々、小さな権限を持つ事があります。本来、全体のために使わなければならないその権限を、自分のために使うことがあります。その権限を使って、役得になる行動をすることがあります。たとえそんなことはしたことがない、という人がいたとしても、そういう誘惑はあります。最後の誘惑は、悪魔に頭を下げれば、この世の繁栄を全部あげる、と言われます。もちろんイエスさまは、ただ神にのみ仕えると、断ります。この話も、私たちには関係のない話に見えます。しかし、私たちはこんな言葉を知っています。

  悪魔に魂を売る

  そんな言葉を聞いたことがあります。一般的には、欲望に駆られて、大事なものを手放してしまう、そんな場面で使われる気がします。世にいう成功者、と言われる人の中にも、心の底から人を信頼することができず、また、自分を愛せなくなっている人がいます。成功は手に入れたが、その道のりで、大事な何かを失った、そう感じる人がいます。
  ここでイエスさまが大事にしているものは、父なる神さまからの愛です。「これは私の愛する子」、天からのこの言葉を携えて、イエスさまは荒野に行きました。神さまからの愛を裏切ることは、自分の大事な何かを失い、自分の魂を傷つけること、だから譲らなかった。愛する神を試すことも、イエスさまは断りました。父なる神から愛されたイエスさまは、イエスさまの方も、父なる神を愛した方でした。愛されたものしか、自分を愛することも、隣人を愛することもできないものです。
  自分を愛することと、隣人を愛することは深く繋がっている。人をやたらに傷つける人に、私たちは言いたくなります。もっと自分を大事にしなと。
  私たちは時々、誘惑に負けます。大事なものを捨ててしまうことがある。なんとなく、空しく、なんとなく後味の悪いをもいをすることがありますそんな時、自分の魂を傷つけている。悔い改めるとは、イエスさまの赦しを受けて、もう一度自分を大事にすることです。魂は、神の言葉によって回復します。礼拝は、神の言葉によって、魂を回復させ、更に魂を豊かに養う場所です。神さまからの愛の言葉を受けて、もう一度自分を大事にする、その思いをもって歩み出しましょう。

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